1. 「新しい恋人達に」が紡ぐ、家族という名の音
2. 脚本が描いた“言葉にならない感情”
脚本・生方美久の筆が特に静かに、しかし確実に感情を掘り下げているのが、『海のはじまり』の魅力です。 物語では、夏と水季の関係が大学時代に終わりを迎え、その後水季は一人で娘を育てて亡くなります。夏はそれを知り、娘を抱えることになるのです。 この中で描かれるのは、“言葉で説明できないまま時間が過ぎる関係”です。 たとえば、水季が夏に伝えなかった想い、夏が水季に抱いた責任、海が持つ「父親を知らない子」の違和感。 これらを脚本は豪語せず、日常の会話や沈黙、背景にある音、海風の音…といった“余白”で描いていきます。 その“余白”こそが、音楽「新しい恋人達に」と重なり、視聴者が“自分ごと”として感じる緩やかな感情に変わるのです。3. 見る人の“はじまり”を引き出す4つのシーン
ここでは、ドラマを通じて“始まり”を感じることができるシーンを4つピックアップし、その中にあるヒントを読み解ります。- 葬式で娘と出会うシーン 夏が水季の葬式で、南雲海という少女と出会う場面。関係性が“知らないまま”から“知るまま”へと動く瞬間です。
- 海が「パパ」ではなく「夏くん」と呼び始める場面 いきなり“父親”になることを告げられた夏と、海の距離が一瞬で変化します。そこにあるのは“役割”ではなく“関係性の再構築”です。
- 水季の過去と夏の現在を重ねる、夜のベンチ 夜風に吹かれながらふたりが座るベンチ。言葉よりも“沈黙”が場面を支配し、視聴者は“その時間”に生きるような感覚を覚えます。
- ラストの“海”が走り出すシーン タイトル通り、“始まり”を象徴するシーン。海が未来へ向かって走り、夏や弥生(有村架純)が見守る構図。このシーンが視聴者に“これから”を印象づけます。
4. なぜこのドラマが“今”響くのか?
『海のはじまり』が、多くの視聴者の心に残った理由の一つは、“家族”と“血のつながり”を問い直した点です。 現代社会では、ひとつの家族像だけではなく、シングルマザー・異父兄弟・再婚・養子…といった多様な関係性が増えています。 このドラマは、そうした“何にもしっかり決まっていないまま始まる関係”を丁寧に描いた作品です。 さらに、2024年の「月9」という枠で、“涙・感動”ではなく“静かな再生”をテーマに掲げた点も時代とマッチしています。{index=14} 視聴者もまた、キャリア・家族・恋愛…それぞれの“途中”に立つ存在です。 会社員として働く夏のように、“まだ道半ばでもいい”と感じさせてくれる物語だからこそ、刺さる。 そしてその余韻を音楽が受け止め、視聴後の“何か”をそっと胸に残してくれます。まとめ|終わりは決まっていない、だから“はじまり”になる
『海のはじまり』が示してくれるのは、“誰かのために生きる”ではなく、“誰かと共に生きる”という時間の尊さです。 そして、始まりでもなく終わりでもない“その瞬間”に向き合えるかどうかが、人生を豊かにする鍵なのかもしれません。 back number の「新しい恋人達に」が流れるたびに、視聴者は自分自身の“はじまり”を探し始めるでしょう。 もしあなたが今、何かを終え、何かを始めようとしているのであれば――。 このドラマの余韻が、そっと背中を押してくれるはずです。 私は弥生ちゃんがママになって幸せな家庭を築くハッピーエンドだけを夢見て視聴しておりました。 それぞれのキャラが決断する瞬間。良いですね。ドラマってホント面白い。主題歌: 「新しい恋人達に」(back number) 脚本: 生方美久 放送: 2024年7月期 フジテレビ系月9