“世界が抹茶を求めている――”。その青々とした粉末を巡る争奪戦が、今まさに日本国内で進行しています。
人気の抹茶ラテ、抹茶スイーツ、そしてSNS映え。こうしたトレンドが加速する中、産地では「店頭から抹茶が消えた」「購入制限がかかった」という声もあがっています。
では、なぜ「抹茶=日本産」が手に入りにくくなっているのか。今回はその構造的な背景を掘り下げ、読者にとっての“抹茶との向き合い方”まで考えてみましょう。
1. なぜ今、抹茶が“争奪”されるほど注目されているのか?
抹茶人気の背景には、少なくとも三つの流れが重なっています。まず一つ目は、健康志向の高まりです。抹茶には茶葉ごと粉にしているため、カテキン・テアニン・ビタミンなどの栄養素を丸ごと摂ることができることが紹介されています。
二つ目は、SNSや“映え”文化の影響です。鮮やかな抹茶グリーンはビジュアル的に強く、海外では「MATCHA」としてライフスタイル商材化され、抹茶ラテ・抹茶スイーツ・抹茶コスメなどに展開されています。
三つ目が、海外需要の急拡大です。日本政府のデータでは、2020〜2024年の緑茶・抹茶の輸出額が大きく増加しており、2024年には前年比25%増の364億円に達しました。
こうした需要拡大の中で、「日本産抹茶=高級・信頼」のブランドが機能し、国内外の消費者が争奪戦に加わっているのです。
2. 供給が追いつかない構造的なボトルネック
では、なぜ需要が急増しても供給が追いつかないのか。主な原因を整理します。まず、抹茶生産の基本である「てんちゃ(碾茶)」の栽培が難しいという点。遮光栽培・葉の蒸し・乾燥・粉砕という工程が他の茶葉と異なり、手間と時間がかかります。
加えて、昨今の気候変動も影響しています。2025年夏の京都・宇治地域においては、熱波の影響でてんちゃ収穫量が25%も減少したという報道もあります。
さらに、茶農家の高齢化・後継者不足、転作による産地転換困難なども深刻です。
これらが複合して「生産量の急拡大は困難」「収穫量の変動が大きい」「価格が上がる」という構図を作っています。実際、京都で行われたオークションでは、てんちゃ価格が前年比170%増となったというデータも。
3. ブームがもたらす影響とリスク
供給サイドの制約の中で、以下のような変化・リスクが顕在化しています。
- 国内で品切れや「1人1点」制限が発生。
- カフェや小売での抹茶原料高騰による価格転嫁。
- 産地を問わない“抹茶風味”商品の増加。いわゆる「なんちゃって抹茶」問題。
- 高値によるバブル化の懸念。需要が熱望される反面、品質低下・産地疲弊のリスクも指摘されています。
これらを読むことで、抹茶がブームという“光”だけでなく、産業として抱える“影”も見えてきます。
4. 読者に役立つ抹茶の“選び方&楽しみ方”ガイド
ブームを追う中で、消費者として賢く楽しむためのポイントを押さえておきましょう。
① 産地・等級を確認:真の「抹茶」はてんちゃ由来。名称・産地欄や茶葉品種(やぶきたなど)をチェック。
② 加工日・保管方法を意識:挽きたて・酸化防止が品質維持の鍵。
③ 用途に応じた選択を:ラテ用・スイーツ用・茶道用と用途で求める「味」や「質」が異なります。
④ 海外産・代替茶を視野に:価格高騰が続くなら、煎茶・焙じ茶・サステナブルな新しい茶葉も選択肢に。
⑤ 自分なりの“抹茶時間”を作る:単に「飲む」から、「味わい・文化を感じる」方向へ。抹茶道具を揃えてみる、小さな和カフェ時間を設けるなど、ライフスタイル化することで満足度が上がります。
5. これからどうなる?抹茶市場の未来予想
市場のプロは、今後の抹茶市場をこう予測しています。
・生産側の対策:スマート農業・設備自動化・海外茶園との協力。
・ブランド戦略の転換:「普段使い」から「ラグジュアリー・体験型」へ。
・輸出・国内バランスへの挑戦:国内消費をどう守るか。
消費者としては、価格・入手難の状況を踏まえた選択がより重要になります。抹茶が“選びにくい時代”に入ったとき、品質・背景・用途を理解することで、失望ではなく満足につなげることができます。
まとめ:抹茶を「選ぶ力」を持つ時代へ
抹茶は今、単なる“和スイーツの素材”ではなく、世界から注目される“グリーンゴールド”になりつつあります。とはいえ、その光の裏には、伝統産地の苦悩、サプライチェーンの限界、価格バブルの影があります。
だからこそ、消費者一人ひとりが“選ぶ力”を持つことが大切です。産地・等級・用途・保管を見極め、「背景を知る」ことで、抹茶の味わいも、価値も変わります。
日本産抹茶が“争奪戦”に陥った今、焦らず、賢く、そして愉しむことが、次の時代の抹茶の楽しみ方です。
背景と注目の理由
編集部の考察
編集部コメント
(文・話題ダイジェストプラス編集部)
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