2025年、全国でクマによる死亡事故が統計開始以来の最高水準に達しました。 登山や里山、さらには市街地へ――クマの出没が人の生活圏へと急速に近づいてきています。 「山だから安全」「里だから安心」という境界があいまいになった今、私たちは何を知り、何を備えるべきなのでしょうか。この記事では、クマ被害の最新状況、背景にある構造的な変化、そして日常でできる対策を整理します。
1. なぜ今、クマ被害が“拡大”しているのか?
まず押さえておきたいのは、クマ被害が“増えている”というだけでなく、“場所・時間・行動パターン”が変化している点です。 環境省のデータでは、2025年4〜8月末時点で人身被害が全国で69件に達し、死亡者も5人を数えています。 さらに、住宅街や官庁街にクマが出没したという報道もあり、「人間の生活圏」がクマの行動圏に侵食されてきているのです。 その背景にはいくつかの構造的要因があります。 ● ①山の餌資源の減少:ブナやドングリなどの堅果が少ない年ほど、クマは里に下りやすくなります。 ● ②人里の変化:人口減少・空き家増・山村の管理力低下により、ゴミや果樹などがクマを誘引する環境が増えている。 ● ③クマ個体の“学習化”:人の食べ物やゴミにアクセスしやすい個体が「人を怖れない」傾向を強めており、それが遭遇リスクを高めています。
2. “被害の形”が変わってきた
従来、クマ被害といえば「山中で登山者が遭遇」というイメージでしたが、ここ数年で様相が変わっています。 例えば2025年8月14日、北海道・羅臼岳登山道で登山者がヒグマに襲われ死亡する事件が起きました。調査中に発見された母子グマが“人を避けない”個体であったことも話題になっています。 また、都市部での出没も増加。スーパーに侵入した後、買い物客がけがをしたケースも報じられています。 このような変化は、以下のような新しいリスクを生んでいます。 - 住宅街・公園・農地でのクマ目撃 → “いつもの道”があぶなくなる。 - 登山だけでなく、日常生活(散歩・庭仕事・子どもの通学)にもリスクが広がる。 - クマが“冬眠しない”兆候も報告され、年間を通じて注意が必要になっています。
3. 被害を防ぐために知っておきたい3つのポイント
では、日常やアウトドアで私たちにできることは何でしょうか。「知れば安心」ではなく、「行動できる」ことが肝心です。
- ① 音と動きを使って“いない”と知らせる 登山や山菜採り、散歩では鈴・ラジオ・声かけを意識。クマは人の気配を嫌います。 特にカーブや視界の悪い場所では一度立ち止まり、「こんにちは」と声をかける。山の専門家も推奨しています。
- ② ゴミ・食べ物の管理を徹底する 農地・庭・アウトドアでクマを誘引しない環境づくりが重要です。電気柵・金網・匂いの強い食品の外出し厳禁。里山・集落単位での対応策も増えています。
- ③ 遭遇したら“落ち着いてその場を離れる” クマに出くわしたときは、焦って走らず、背を向けずにゆっくり後退。子グマを見ても近づかず、親グマの存在を想定。遭遇報告や地域の注意情報を常にチェックすることも推奨されます。
さらに、都市・住宅地での対応も重要です。自治体はクマ出没マップの公開、警戒区域の設置、非常呼び出しシステムなどを展開中。登山・生活の行動前に“出没情報の確認”を習慣にすることも、リスク低減につながります。
4. これからどう変わる?人とクマの“共存”を考える
クマ被害を“ただ怖がる”だけでは未来は変わりません。では、どのように対応が進んでいるのかを見てみましょう。 ● 「捕獲・駆除制度の見直し」:2025年度には緊急銃猟制度や指定捕獲の動きが報告されています。 ● 「スマート農林・センサー技術の活用」:AI・IoTを使ったクマ検知システムの研究も進行中。 ● 「里山振興と生息域整備」:人が離れた山村を見直し、“人と動物が近づきすぎない間(ま)”をつくる地域づくりが模索されています。 このような変化を踏まえると、私たちは「備える消費者」へとシフトする必要があります。クマ被害は“登山だけの問題”ではなく、人里・生活圏に関わるリスクなのです。
まとめ:自分ごとにする“森と街の境界線”
クマ被害の拡大は、自然と人間の境界線が変わりつつあることを示しています。 「昔は大丈夫だった」が、今は通用しない。 だからこそ、知識を得て、準備をし、日常の行動を見直すことが大切です。 音を出す、匂いを残さない、遭遇したら落ち着く——これらが命を守る“間(ま)”となります。 クマを“恐れる対象”ではなく、“共存の相手”として少しだけ理解する。 そのとき、私たちは守るべき森と街を、より安全に味わえるようになるでしょう。
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(文・話題ダイジェストプラス編集部)
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